ステップのある金属単結晶表面上の反応特性を金属担持触媒のモデルとしての側面を念頭に置いて論じた。
金属担持触媒で, 金属の粒径を変えたときに見られる反応性の変化が, 金属微粒子上のステップやキンクサイトの密度に密接に関連すること, 更に, ステップのある単結晶表面自身を触媒として用いることにより, 金属触媒反応の本質的理解が得られることを説明した。次いで, ステップやキンクサイトがテラスとは異なる反応性を持つことを今迄に得られた実験結果により示した。この様なステップやキンクの存在が吸着や脱離の過程に大きな影響を与えることをステップのある白金単結晶からのCOの昇温脱離スペクトルやステップのあるニッケル単結晶上へのH2の付着確率の実験例により示した。ステップのある高指数面には, ステップとテラスの2種類のサイトが存在する。この不均一性を用いて, テラスサイト上での吸着分子の移動速度が決定出来る。又, ステップサイトを異種原子により修飾すると, 表面反応に対するステップサイトの役割を明確に示すことが出来る。
この様なステップやキンクサイトの反応性の差異は触媒反応ばかりでなく, 薄膜合成でも重要な意味を持つ。