抄録
走査トンネル顕微鏡 (STM) は, 表面の原子構造, 電子状態を実空間で観察することのできる極めてユニークな表面分析手法である。しかし, その有用性が広く認識されるにしたがって, 走査に用いられる探針 (tip) そのものの形状が十分に評価されていないことが問題点としてクローズアップされてきた。こうしたSTMの現状を考慮して, 我々のグループでは, STM中に探針評価及び調整用のFIM (電界イオン顕微鏡) を備えた装置FI-STMの開発を試み, このほど完成させた。本稿では, STMにおける探針の問題点について述べたのち, 最近, 我々のグループで得られた研究結果 [Si(001)2×1-Li, K, Si(111)7×7-Li, Si(111)7×7-H] について報告する。