これまで, Ni等の遷移金属上にある条件で単原子層のグラファイトを形成することができることは比較的よく知られていた。しかし, その性質についてバルクグラファイトときちんと対応させて検討した研究は非常に少なかった。最近, 高分解能電子エネルギー損失分光法を用いて単原子層グラファイトのフォノン分散を測定することが可能になり, この超薄膜グラファイトの, バルクグラファイトからの違いが明らかになってきた。単原子層グラファイトにおいては, π結合が関与していると思われる力定数が著しく弱くなっており, これはおそらく下地からの電荷移動によるものだと考えられる。本解説ではこのフォノン分散についての結果を中心に, 単原子層グラファイトの応用の可能性についても述べる。