表面科学
Online ISSN : 1881-4743
Print ISSN : 0388-5321
ISSN-L : 0388-5321
モンテカルロシミュレーションのEPMAへの応用
中川 由佳
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 11 巻 9 号 p. 542-548

詳細
抄録

モンテカルロシミュレーションを用いて試料表面から入射した電子の試料中でのふるまいを予測することにより, EPMAによる定量分析値をより正確にもとめる方法を紹介する。
まず, 従来EPMAで用いられているZAF法と同じ考え方にもとづいたモデルを用いてシミュレーション計算を行い, X線の発生関数を求めるプログラムを作成した。更に, 現在よく用いられているRutherford散乱断面積の代りに, Mottの散乱断面積の式を用いるプログラムを用意した。
シミュレーション計算の評価のために試料としてGaAs及びNi薄膜を用い, 加速電圧に対するX線強度比について, 計算値と実験値の比較を行った。
GaAsについては, ZAF法, シミュレーション計算ともに実験値に対しよい結果が得られた。
Ni薄膜については, 計算値が実験値よりも高くなる傾向が得られた。Mottの式を用いることにより, 高加速電圧領域での精度は向上したが, 低加速電圧領域では, 精度はよくなったものの, まだ誤差は残った。
最後にシミュレーション計算を用いて定量分析を行う方法として, 検量線法, 収束法を検討した。両方の方法とも, 条件設定時に特に問題のない場合は, 充分適用に値することが予想された。

著者関連情報
© 社団法人 日本表面科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top