表面科学
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バナジウム-リン複合酸化物によるブタン選択酸化
奥原 敏夫御園生 誠
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1990 年 11 巻 2 号 p. 90-96

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抄録

アルカンを利用するプロセスとして注目されているブタン法無水マレイン酸 (MA) 合成の反応機構および触媒であるV-P系複合酸化物の特性, とくに表面相の役割について重点をおいてまとめた。Vが4価の単一結晶相であるピロリン酸ジバナジル ((VO) 2P2O7) は他のV-P酸化物にくらべ特異的に優れた性能を示し, (VO) 2P2O7に存在するV4+ (=O) -O-V4+のペアーサイトが反応活性点と推定されている。反応は, ブタン→ブテン→ブタジエン→フラン→無水マレイン酸 (MA) の逐次反応で進行し, (VO) 2P2O7は律速段階であるブタン→ブテンのステップに高選択的であるのが特徴である。酸素同位体法により反応は触媒の表面層のレドックスで進行していることがわかった。また, 表面酸素の反応性がTAP法 (Temporal Analysis of Products) で検討され, ブタン→ブテン, フラン→MAの両反応には吸着酸素, 他は格子酸素が関与していることが示唆されている。

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© 社団法人 日本表面科学会
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