表面科学
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モリブデン硫化物触媒の表面構造
島田 広道西嶋 昭生
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1990 年 11 巻 2 号 p. 97-103

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抄録

重質炭化水素資源の水素化精製 (脱硫, 水素化分解等) に用いられているMo系硫化物担持触媒の表面構造に関する研究を2テーマに分けて解説した。
前半では, 脱硫反応に高活性を示す “Co-Mo” 触媒におけるCo硫化物とMo硫化物の相乗作用に関する研究に焦点を絞り, これまでに提唱された “Co-Mo” 硫化物の構造モデルを紹介した。近年では, Co8S9とMOS2との接触により高活性が発現すると仮定する “contact synergy model” とMoS2のedge部にCoが配置して高活性サイトを形成する “Co-Mo-S” 相の両モデルの間で議論が行われている。両モデルともに, 各種キャラクタリゼーションの他, 反応速度等の詳細な解析に基づいて提唱されたもので, 分子・原子レベルでの触媒構造の議論として極めて興味深い。
後半では, 触媒設計を目指した触媒構造と触媒機能の相関についての研究を紹介した。Mo系硫化物触媒の機能は担体により大きく変化することから, 各種担体に担持された触媒の機能, 構造を明らかにし, ついで触媒の構造と触媒機能との相関について討論を行った。さらに, Moの担持量によりMoS2の集合状態が変化することから, 集合状態と触媒機能の相関についても検討が行われた。これらの結果に基づいて, MoS2の活性点についてもモデルが提出されている。
以上, 従来経験に基づいて調製されていたMo硫化物触媒が, 最近, より高性能の触媒開発を目的として学問的にも解明されつつあり, 学問体系に基づいた “触媒探索”, “触媒設計” へと進みつつある。

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© 社団法人 日本表面科学会
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