入射する光の角度により光の透過状態 (透明⇔散乱) が変化するという興味深い光学特性をもつ新しい高分子膜は, 内部に特殊な規則構造を有している。 この高分子膜の内部には, 膜の深さ方向に沿ってブラインド状にミクロな層構造が形成されており, その構造の方向を制御することにより, 光を散乱させる領域は自由にコントロールすることができる。入射角度を変えていくことにより透明・不透明の両領域が鮮やかに変化するというこの高分子膜の光学特性を, 理論的に説明するためミクロ構造の解析を試みた。 干渉位相差顕微鏡による局所屈折率測定および分析電子顕微鏡による各相の組成分析の結果から, この高分子膜中には樹脂組成の異なる相が数μm間隔の高屈折率部と低屈折率部という繰返しで比較的規則正しく形成されており, その相間の屈折率差は約0.04程度と大きな値となっていることが判明した。 これらの解析結果から, この高分子膜の光学特性は体積位相型回折格子モデルを考慮することにより説明することが可能となった。