1992 年 13 巻 5 号 p. 286-293
ファクターアナリシス法によるAES深さ方向分析のための解析プログラムを試作し,TiN/Ti/Siの界面分析に適用し,本手法の有用性を調べた。以下,得られた知見について述べる。 まず,従来のAPPH測定によるdepth profileで観察された問題点が,ファクターアナリシス解析によりほとんど解決されることが示された。これは,ファクターアナリシス法はスペクトルの全データを利用するために,ピークの重畳や同一元素の状態変化がある場合にも効果を発揮するからである。 また,ファクターアナリシスに用いるスペクトルタイプ(EN(E),dEN/dE,d2EN/dE2)が異なっても,ほぼ同一の濃度プロファイル形状が得られることが判明した。特に微分型スペクトルにおいては,バックグラウンドの除去が自動的に行われているために,EN(E)型に比べて,スペクトルの加成性の条件がより満足されていることも明らかになった。それゆえ,バックグラウンドの変動の大きい場合には,EN(E)型ではバックグラウンドの除去を行う必要があるといえる。プロファイル形状の解析から,より深い界面(Ti/Si)のほうが,分解能Δzが悪化しており,形状も非対称的になっていることが明らかになった。すなわち,ファクターアナリシスの手法は,界面濃度プロファイルの形状解析に有効であることが示された。