表面科学
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イオンビームによる表面水素の定量とその表面研究への応用
尾浦 憲治郎
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1992 年 13 巻 6 号 p. 344-350

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抄録

 イオンビームを用いた筆者らの研究を中心に, 固体表面に吸着した水素の定量法およびその表面界面研究への応用例について紹介する。高エネルギーイオンと表面水素原子との弾性衝突を利用する弾性反跳粒子検出法は, 簡便で信頼性に富み, しかもほとんど非破壊的といえるので, 表面研究に適している。Si(100)-2×1清浄面への吸着曲線の測定から, 吸着が2段階の過程で生じていることが示された。また,Si(111)-7×7面では, 単にDAS構造モデルのダングリングボンドへ水素が1個ずつ吸着するモノハイドライドだけではなく, トリハイドライドも存在することを示唆する結果が得られた。一方,低エネルギーイオンによる弾性反跳粒子検出法では,定量性に少し問題が残るものの表面感度が向上する。両者の併用は,表面水素の研究に一層有効となる。これを用いて行われた研究例として, Si(111) に水素を飽和吸着させた水素終端面上でのエピタキシー促進現象について紹介する。水素を1.5ML程度吸着させた Si(111) 面では, Ag薄膜のエピタキシャル成長が, 清浄面に比べて著しくよくなることがわかり, そのメカニズムについてもふれる。

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© 社団法人 日本表面科学会
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