表面科学
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酸化物超伝導体の構造崩壊過程を高分解能電顕で観る
松井 良夫柳澤 佳寿美
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1992 年 13 巻 7 号 p. 436-440

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抄録

透過型電子顕微鏡(1000kVおよび200kV)の中でイットリウム系酸化物高温超伝導体(YBa2Cu4OyyおよびY2Ba4Cu7Oy)を電子線で照射し,照射損傷過程を高分解能法で観察した。高速電子線(1000kV)では入射電子との直接衝突(ノックオン)効果による非晶質化が観測され,特に(CuO)2層から構造が崩れてゆく傾向が見られた。一方200kV電子線では加熱効果による分解反応が引き起こされ,(CuO),2層がCuO層に変化すると共に,分解生成物たる酸化銅(CuO)の析出が見られた。これらの結果は電子線照射によって酸化物超伝導体の微細組織をさまざまの形で変化させ,磁束のピン止め中心を導入することの可能性を示唆するものである。

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© 社団法人 日本表面科学会
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