表面科学
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スピンSEM
早川 和延
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1992 年 13 巻 9 号 p. 512-517

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抄録

スピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)の着想と,その開発,応用に至る経過を短くまとめた。筆者による電子スピン計測技術研究の出発点は1966年に始まる。当時,東大物性研でLEEDの基礎的現象の研究に従事していたが,その頃ヨーロッパを中心に水銀などの重い原子線による中低速電子線の散乱とスピン偏極の研究が広く展開していた。LEEDと中低速電子線の散乱という共通性から,数人の仲間と2年間にわたり集中的にスピン計測の調査を行った。その後,日立中研で通産省の中核技術補助金(固体材料分析機器システムの研究試作1976~1978)の交付を受けたのを機会に,1977年度から高速モット散乱方式を採用した低速電子用スピン分析器の開発に着手した。筆者が電子スピン計測に執着した理由は下記の理由による。筆者が在職した当時の物性研(1964~1970)の雰囲気は磁性と超伝導の天下であり,LEED研究を行う「結晶」は肩身が狭い思いが強かった。この背景があり,何とか電子スピン計測技術の研究を通して磁性に関連するような研究を展開できないかと執着した。特に見通しがあったわけではないが,幸い電子スピン分析器の開発と,それを搭載したSEMの開発に初めて成功することができた。本稿は,この過程の技術にかかわる部分の概要をまとめたものである。

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