1993 年 14 巻 7 号 p. 410-416
低速イオンの固体表面における中性化はイオン種や表面の電子状態によってまったく異なった様相を呈し, 見かけ上きわめて複雑な現象である。これは衝突過程で形成される準分子状態を媒介として, イオンが表面の電子系と多彩な相互作用をするためである。この小論では,低速イオン散乱における電子遷移の素過程について述べるとともに, 重水素イオン散乱を用いた新しい最表面原子の結合状態の解析手法を提案する。また, この手法に基づく, アルカリおよびアルカリハライド吸着表面の解析結果をあわせて紹介する。