表面科学
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有機薄膜のエピタキシャル成長指針
多田 博一小間 篤
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1993 年 14 巻 8 号 p. 452-460

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抄録

分子線エピタキシー(MBE)法を用いて,アルカリハライド(AH)や遷移金属ダイカルコゲナイド(TX2)の清浄表面に,さまざまな有機物の超薄膜を作製し,反射高速電子回折(RHEED)を用いて,成膜第1層目の分子配列を調べた。基板の格子定数を系統的に変化させて薄膜成長を行った結果,以下のような特徴を見出した。(1)多くの有機物は,TX2劈開面に代表されるファンデルワールス表面で秩序構造をもって配列する。(2)不対電子をもつ窒素原子を有するなど,分子内に電荷分布をもつものは,AH上で静電的相互作用を介して配列させうる。(3)平面型分子は分子面を基板に平行にして配向する。(4)有機分子はできるだけ隙間を少なくするようにパッキングして配列する。(5)その際,分子の組む格子と基板の原子配列との間に,整合関係がある場合,エピタキシャル成長が促進される。(6)ファンデルワールス表面では整合性が満たされない場合でもエピタキシャル成長が起こる。その場合,分子の組む格子の軸は,基板の主軸と一致することが多い。 これらの特徴は,無機基板上に作製した有機薄膜の分子配列・分子配向を予測するとともに,さまざまな有機物のエピタキシャル成長を可能にする指針になると考えられる。

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