固体表面の精密な組成分析や構造分析,またその電子状態の解析のための実験法にはしばしば外部静電界が用いられる。原子スケール制御といった最近の新技術においても電界は欠かせない。では,その原子スケール,すなわちオングストロームの表面世界で電界はどのような役割を担うのであろうか? 従来の経験的手法にたよらず,第一原理電子論の方法を用いて電界効果の解析を試みた。固体表面に強電界(~1 V/A)が印加された場合に表面電荷分布,原子配置がどのような変更を受けるかを探るために,重要な物質面であるSi(100)表面を調べた。表面緩和の特徴は,電界の方向により異なり,電荷分布の変形は表面で突出した原子近傍で顕著である。表面原子が電界蒸発する際の原子位置と電界強度の関係を求め,蒸発機構の予測を行った。