パラジウムを用いた重水電解において常温核融合が起こると発表されてから4年になるが,ことの真偽についてはまだ確定していない。理論的にまったくありえないことなので否定する向きも多いが,明らかに異常現象を示す結果も数多く報告されている。本稿では理論的な問題点を明確にするとともに,研究の現状,広がりを実験事実に基づいて紹介する。 中性子は電解法では生成が少なく,気相法,放電法において顕著なバースト状の発生が多くみられる。電解における過剰熱に関しては入力の10倍まで観測されるようになったが,再現性に問題があり,さらに中性子,あるいはトリウム生成とは相関のないことが明らかになりつつある。