表面科学
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弾性表面波の触媒への応用
表面反応の解析および表面活性化
井上 泰宣
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1993 年 14 巻 10 号 p. 597-602

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抄録

強誘電体結晶に発生できる弾性表面波(SAW)は基本周波数をもち,伝搬において表面の格子変位を伴う。SAWのこれらの特性を固体表面が関与する触媒現象と組合すことは興味ある課題である。本解説ではSAWを(1)触媒反応の解析および(2)触媒作用の活性化に応用した例について述べた。(1)においては,SAWを微弱な信号として導入し,反応進行中に反応物の吸着によって生じる質量変化をSAWの周波数変化としてとらえ,反応中の吸着量を測定した。Shear-horizontal leaky SAWを発生するLiTaO3素子にグルコースオキシダーゼを固定化し,グルコース酸化反応中の基質―酵素錯体量と反応速度の比較から反応機構の詳細な解析ができることを示した。また,ガラクトースオキシダーゼに含まれるCuイオンは触媒活性を司る必須イオンであるが,反応中のガラクトース吸着量の測定から反応過程でのCuイオンの役割を明らかにできることを示した。(2)ではSAW伝搬における格子変位が固体表面にダイナミックな変化を与えることに着目し,SAWによる固体表面の触媒作用の活性化について調べた。SAW素子にPdやCuを薄膜で接合した触媒において,SAW印加によりエタノール酸化反応に対する活性が増加し,酸化反応の活性化エネルギーが減少することを示した。活性化に関連し,SAW伝搬時に起こる格子変位と活性点の形成,電場の発生現象について述べた。

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© 社団法人 日本表面科学会
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