表面科学
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ステップ表面におけるMBE成長の運動学
和田 宏近江 弘和
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1994 年 15 巻 4 号 p. 211-216

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抄録

分子線エピタキシー(MBE)法による微斜面上の結晶成長の運動学が取り扱われている。分子線源から基板結晶への原子蒸着,および結晶表面に沿っての原子拡散を基礎過程とするMBE成長の運動学的方程式が,SOS(Solid on Solid)モデルに基づき非平衡統計力学の手法である経路確率法(PPM)により導かれている。この方程式が等方的な拡散頻度をもつ模型に適用され,表面ラフネスおよび微斜面の表面形態の時間発展が計算される。テラス上の2次元核生成による層成長モードは温度上昇により拡散距離がステップ間距離の半分程度まで延びると,ステッフ。前進モードへ変化することが示されている。これらの結果はGaAs(001)の微斜面のMBE成長で観測されるRHEED鏡面反射強度の温度変化から期待される結果ときわめてよく一致している。さらに経路確率法による結果との比較のために同一モデルに対してモンテカルロ・シミュレーションが行われている。 また表面再構成によりダイマー列方向が一層ごとに90度変わるSi(001)の微斜面に,非等方的な原子拡散頻度をもつモデルが適用され,熱電流下におけるアニーリングが取り扱われている。熱電流方向の反転により2種類のテラスの増大・減少が反転するドメイン反転現象がSchwoebel効果を基に議論されている。

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© 社団法人 日本表面科学会
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