1994 年 15 巻 7 号 p. 433-439
アルミニウムアノード酸化皮膜中には多くの欠陥が含まれているが,これらがアノード酸化皮膜の形成の際,どのようにして生成するのかを述べるとともに,欠陥を評価する電気化学的な方法について,電位走査カソード分極法を中心に述べている。電位走査カソード分極法は,カソード分極により発生するピットの数を調べ,欠陥の数を求める方法である。高純度アルミニウム上に生成したアノード酸化皮膜の欠陥度は一般に小さいが,これを化学溶解すると,欠陥度が大幅に増大する。このことからアノード酸化皮膜の化学構造は不均質で,化学溶解の際,局部的な選択溶解が進行しやすいことと推論できる。また,結晶性酸化物を多く含む熱酸化/アノード酸化複合酸化物皮膜は,通常の無定形酸化物からなるアノード酸化皮膜に比べてかなり多くの欠陥を有することなども述べている。