物質の表面が関与する現象のひとつに接触帯電がある。高分子の帯電は電子が関与し,その振舞いは接触する二つの物質の仕事関数と関連しているといわれている。このモデルでは,高分子のイオン化ポテンシャルよりも浅いレベルに電子の受入や放出のサイトとして何らかの電子レベルが存在することが仮定されている。この電子レベルについて,不純物など外因的なレベルとする考えと,高分子の化学構造と関係した内因的な電子レベルとする考えがあったが,これまでそうしたレベルを直接明らかにした研究は行われていなかった。最近,大気中での光電子放出や仕事関数の測定により,3.4から6.2eV付近の高分子の電子レベルが調べられ,化学構造や帯電との関係が検討された。その結果,高分子の低エネルギー側の電子状態は,その化学構造と相関があり,かつ帯電ともよい相関をもつことが明らかになってきた。