1987年に,実川レベルの輝度を示す有機電界発光(EL)素子が発表されて以来,有機薄膜素子の研究が活発化してきている。このEL素子の成功は,有機材料で高性能な電子デバイスの実現が可能であることを示したという実用的な意味だけではなく,有機材料の電気物性解析という基礎的分野に対しても大きな刺激を与えている。このEL素子は有機薄膜でできた発光ダイオードと考えられ,その電気特性やEL特性の理解には,素子を構成する金属/有機界面および有機/有機界面における接合電子状態を明らかにすることが重要である。このため,われわれは新たにMOS素子構造を利用した変位電流評価法を開発し,電極から有機薄膜中に注入するキャリヤーの挙動を解析した。この方法によりまだ定性的ではあるが,有機接合界面のバンド構造を描くことができるようになってきた。本報告ではこの変位電流評価法を使って,有機EL素子の接合状態と発光機構を中心に有機界面の接合特性を明らかにした結果について述べる。