表面科学
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RHEED―全反射角X線分光(TRAXS)を使った新しい表面元素深さ分布解析法と薄膜成長モード
山中 俊朗井野 正三
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1994 年 15 巻 9 号 p. 585-590

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抄録

RHEED-TRAXS(Total Reflection Angle X-ray Spectroscopy)とはRHEED観察中に表面から放出されるX線を検出する際に,検出角をX線の全反射の臨界角に設定することにより,表面に対する感度をあげる方法である。この条件では数十分の一原子層程度の量の吸着原子を検出することが可能になり,今まで困難であったX線による表面の元素分析を簡単に行うことができる。われわれは最近この方法で電子線の視射角を変化させながらX線強度を測定することにより表面元素の深さ分布を測定する方法を発見した。この方法の深さに対する感度は表面近傍では非常に高く,1原子層以下の分解能が得られる。これは最も手軽に精度よく表面元素の深さを知ることのできる方法であり,エピタクシャル成長や表面・界面の拡散過程における深さ方向の組成変化の研究に非常に有効であると考えられる。われわれはSi表面に2種の金属を逐次蒸着した場合のエピタクシー過程の研究にこの方法を適用し,さまざまな新しい成長モードを発見した。本稿ではまずRHEED-TRAXSの原理について簡単に説明し,つぎにこれを用いた深さ分布解析法について解説する。さらにこの方法を適用したエピタクシー過程の元素分析や種々の成長モードの研究結果について説明する。

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