1995 年 16 巻 2 号 p. 105-112
真空蒸着法,アルゴンスパッタ法,Pイオン注入法により作製したSi(001)アモルファス層の固相エピタキシー過程をSTMにより調べた。真空蒸着,アルゴンスパッタにより形成された表面は類似した表面構造を呈し,均一な丸い粒子状であった。これに対してイオン注入した表面はひどく荒れており不規則なヒルロックに覆われていた。アニールによる表面形状の変化は形成法や表面損傷の程度に大きく依存している。真空蒸着表面の場合,アイランドの異方性成長が250~300度の温度で観察された。アルゴンスパッタ表面では,粒子状のものは245度で融合し,さらにアニールすることによりアモルファス層の結晶化が促進された。また,表面構造の回復過程や欠陥の振る舞いが実時間で観察された。逆位相境界は結晶成長における有力な核生成サイトとなることがわかった。これに対して,Pイオン注入した表面を結晶化させるにはさらに高い温度(730~950度)が必要であった。この温度でさえも,表面はボイドを含んでおり,これは最初に存在していた表面のくぼみあるいは不純物の表面偏析によるものと思われる。