表面科学
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有機溶媒中の金属硫化物超微結晶の光触媒反応:量子箱光触媒作用
和田 雄二柳田 祥三
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1995 年 16 巻 3 号 p. 180-187

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抄録

有機溶媒中で硫化亜鉛および硫化カドミウムを調製することによりナノサイズで粒径分布の狭い、しかも溶媒の種類に依存して立方晶系または六方晶系の超微結晶が得られる。この超微結晶の化合物半導体は、光照射下において、電子供与体の存在下、カルボニル化合物、オレフィン、CO2の還元反応に対する光触媒作用を示す。大粒径(マイクロメーターオーダー)の硫化カドミウムではカルボニル化合物の1電子還元反応によるピナコールが生成するのに対し、メタノール中で調製したナノ超微結晶硫化カドミウムを用いると2電子還元体であるアルコールが主生成物である。これは、ナノサイズ超微結晶ではその表面上にカドミウムのメタルクラスターが光照射とともに生成し、2電子還元反応サイトとして機能するためである。また、N,N-ジメチルホルムアミド中で調製した硫化亜鉛のナノ超微結晶はCO2の光還元を高効率で触媒する。この系においては表面のイオウ欠陥の有無が生成物であるCOおよびギ酸の生成経路を決定する重要な因子である。金属硫化物の光触媒作用を量子箱光触媒作用としてとらえ,量子サイズ効果に起因する還元力の発現と表面における反応基質の活性化の重要性から論じる。

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