走査トンネル顕微鏡(STM)の探針を用いた原子操作の研究が最近急速に進みつつある。STMの探針を用いれば,究極ともいえる原子1個ずつの単原子操作から,原子100~1000個単位でのナノメーター加工までが可能である。最近の研究は,後者の場合が多いが,本稿では未来の応用を見つめた単原子操作について議論する。単原子操作の基本は,原子を1個ずつ「除去する」,「供給する」,「移動する」ことである。これらの原子操作をリアルタイムで何らかの電気信号によって「検出する」ことも重要である。これらのおのおのについて,二,三の例を挙げながら現状を紹介する。