多価イオンのもつ電子的内部エネルギーを利用した原子層エッチングについて述べる。この方法は, 多価イオンを表面に照射したときに多価イオンの中性化によって表面に生成する複数正孔間の反発力による表面原子の脱離反応を原理とするものである。GaAs表面にAr多価イオンの価数を選択して照射した結果, 表面原子の脱離収率が多価イオンの価数, すなわち電子的内部エネルギーとともに著しく増大する現象が見出された。これは多価イオンを利用した原子層エッチングの原理的可能性を示すものである。今後,多価イオンの極低速化ならびにイオン照射を受けた表面状態の解析などを進めることにより高性能な原子層エッチングの開発が期待される。