最近,金属や半導体表面における表面光化学の分野はレーザーや気相でのさまざまな実験手法が取入れられ急展開を見せ,新たな段階に入った感がある。表面に吸着した分子の光誘起過程としては脱離や解離が挙げられるが,これらの現象には吸着種の電子状態の励起とそれに続く原子核のダイナミクスが含まれている。したがって,この研究主題には吸着種の電子構造,光と吸着種・表面との相互作用など化学物理的にきわめて重要な問題が存在する。また,このような基礎学問としての興味のみならず,表面での光誘起過程を用いた多くの応用分野を考える場合にも,表面光化学過程の分子論的理解は有用である。本解説では金属や半導体表面における吸着種の光脱離と光解離について,特に,励起メカニズムと脱離・解離のダイナミクスについて述べる。具体的な例としては,NO/Pt(111)における光脱離CH4/Pt(111)およびN2O/Si(100)における光解離を挙げる。