表面科学
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固体超強塩基触媒と有機合成
鈴鴨 剛夫
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1995 年 16 巻 1 号 p. 69-72

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抄録

γ型のアルミナを攪拌しながら200~600℃で水酸化ナトリウム,金属ナトリウムと逐次加熱処理することによって,塩基強度(H_)が37以上の固体超強塩基が得られることを見出した。本固体超強塩基の調製の要点は,まずアルミナを水酸化ナトリウムと反応させて表面にアルミン酸ナトリウムを生成させ,ついで加熱下に金属ナトリウムで処理することである。このことにより塩基強度(H_)が37以上という最強の固体超強塩基触媒が得られるが,ここで,(1)原料のアルミナとして,γ型を用いることが超強塩基性を発現するうえで重要である,(2)アルカリ金属添加時の処理温度も重要な因子である,(3)アルミン酸ナトリウムの常圧における二つの構造,すなわちβ型(低温安定型)とγ型(高温安定型)のうち,こうして調製したものは室温でもγ型構造が保持されることから,このアルミン酸ナトリウムはアルミナとの相互作用により束縛された構造を有している,(4)触媒の23Na固体NMRスペクトルでは,Na+に帰属されるピークのみを示し,(5)XPSスペクトルによると,金属ナトリウムからアルミン酸ナトリウムに電荷の移動が生じて酸素原子の電子密度がさらに高くなっている,などのことが明らかになった。かかる新知見をいかすことによって,高活性な固体超強塩基触媒が安定して製造され,実用化されるに至った。

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