表面科学
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プラスチック基板薄膜機能材料の開発
透明断熱フィルム
側島 重信
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1995 年 16 巻 1 号 p. 73-77

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抄録

可撓性・透明性など高分子の特徴を生かしながら,導電性や光の反射など自由電子が関与した機能材料を探索する過程で,高分子自体の機能化よりも「高分子は基板材料とし,その上に目的の機能薄膜を積層して機能材料とするほうがよい」と考えた。そして,透明導電性フィルム,透明断熱フィルム,可撓性基板太陽電池などを開発した。可視光は透過し,赤外光(熱線)は反射する波長選択光学特性を示す薄膜には,半導体薄膜と誘電体/金属/誘電体の多層膜との二つのタイプがある。製造コスト予測などから,TiO2/Ag/TiO2の多層膜タイプを選び,計算機シミュレーションと,光学モニターを備えたスピンコーターによる実験で構成を決定した。得られた多層膜は,設計どおりの初期特性を示したが,100時間程度光照射すると,赤外反射特性が劣化した。この劣化は光照射前後のXPSとSIMSスペクトルから,銀の光誘起移動による銀層の崩壊によることがわかった。これは,たとえば銀を合金にすることで防止できる。以上の基本構成に保護層や粘着層を加工し,透明断熱フィルム「レフテル」を完成した。このフィルムは,優れた波長選択光学特性を有し,建物や冷凍・冷蔵ショウケースの窓に貼ることによって,顕著な断熱効果・結露防止効果を示した。

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© 社団法人 日本表面科学会
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