抄録
細束で,かつ高電流密度を有する集束イオンビームは,材料の任意の位置での切断加工や配線など,サブミクロンでの微細加工に広く用いられている。一方,イオン衝撃による2次イオン放出現象に基づく2次イオン質量分析法は,固体表面の高感度・3次元分析手法として実用化が進んでおり,各種固体材料の評価に広く利用され高い評価を得ている。2次イオン質量分析法の1次ビームに集束イオンビームを用いれば,従来の2次イオン質量分析法では不可能な,0.1μm以下の高い面方向分解能での局所形状観察や元素分布解析,ならびに局所定量分析,さらには3次元局所分析が可能となる。本稿では,はじめに,2次イオン質量分析法の1次ビームに集束イオンビームを用いた際の,特徴的な分析例を2例解説する。ついで,著者らが開発した,ガリウム集束イオンビームを1次ビームとし,かつ2次イオンマルチチャンネル並列検出系を備えた,サブミクロン2次イオン質量分析装置の特徴について述べる。さらに,サブミクロン2次イオン質量分析装置を用いた,新しい局所定量分析と局所3次元元素分布解析の応用例を示す。最後に,集束イオンビームを1次ビームとした2次イオン質量分析法の今後の展開について解説する。