貴金属は歯科治療に不可欠な修復材料であり,他の材料と組合せて用いられることが多い。しかし,歯科用硬質レジン材料との組合せによる修復物製作においては,レジンが貴金属と接着しないため煩雑な処理などにより金属フレームに固定しなければならず,直接接着させる方法が求められていた。その方法の一つとして,酸化層のない貴金属表面とレジンを直接接着させるためのモノマーの開発があった。官能基にイオウ(S)を有するモノマーを合成した結果,レジンと貴金属とを接着させることが可能になった。これはSが貴金属表面原子と化学結合し,モノマー分子内の二重結合がアクリレート系モノマーと共重合する機構によるものである。