AFMを起源とする走査型フォース顕微鏡はここ数年の間に急速に高機能化している。高機能化を(1)形状測定モードの多様化,(2)測定できる物性の種類の拡大,(3)装置の高機能化,という三つの視点からとらえて解説する。まず形状測定モードの多様化であるが,これにより硬い試料はもちろん,有機物や生体のような柔らかい試料まで安定して測定できるようになってきた。このため,広い分野で高分解能観察装置としての地位を固めつつある。また,形状と同時に測定できる試料表面の物理的な性質の種類も磁気力,摩擦力,電位,粘弾性と増える一方である。表面形状に対応した物理的性質のマッピングは試料のミクロな解析方法として期待されている。さらに装置の高機能化という点では1台の装置でいくつかの機能を果たせる多機能化,他の装置と組合せて得られる情報量を増やしたり使いやすくする複合化,限定された試料に対して測定能率を向上させるための専用化など多方面からのアプローチがなされている。