表面科学
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21世紀を指向する学問:非線形ダイナミクス
吉川 研一
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1996 年 17 巻 6 号 p. 302-307

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抄録

多種類の化学物質からなるシステムの状態は,一般的には「自由エネルギー最小の原理」によっては決まらず,過去の時間的経過(履歴)が重要である。長鎖DNA分子の折り畳まれ方が操作手順(時間的順序)により異なることを例にあげて,操作手順がどのように系の最終状態(定常状態)の決定に関わるのかを説明する。そして,化学反応系では,一般に著しい非線形特性が内在していることを解説する。非平衡下,「詳細釣合の原理」は成立しなくなることを示し,この「詳細釣合」の破れる条件を知ることが,「時間的リズム」や「空間パターン」の発生,さらには,「スカラー的な化学反応から,ベクトル的な仕事を直接取り出すことのできる系」の設計にもつながることを述べる。まとめとして,非平衡開放系において,非線形特性を活用することが,“生物らしさ”を示す化学システムの創造にとって本質的な意味を持つことを強調する。

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