細胞膜の基本構造は,脂質の二分子膜である。脂質分子の集合体は,二分子膜構造以外にも様々な形態をとることが可能であることが知られている。本稿では,人工的に二分子膜を作り出す実験法のノウハウとして伝えられてきた技術を,時間軸上の自己組織化過程と捉えて再検討した。このような自己組織化過程を利用することは,蛋白質を膜に対して方向性をもって組み込む際にも有用であることを示した。さらに,リン脂質の自己組織化機能を利用した実例として,細胞サイズの巨大リン脂質小胞体(リポソーム)内部にDNAを封入する新たな方法を紹介する。