チタン酸バリウムBaTiO3(BT)やチタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3(PZT)に見られるドメイン構造は古くから観察されてはいるが,いわゆるメゾスコピックなスケールでの秩序構造であり,理論的な理解が困難な対象でもある。この解説では,ペロブスカイト強誘電体のドメイン構造の起源と,その外部電場に対する応答としてのヒステリシスについて,平易な解説を試みる。BTやPZTに見られるドメイン構造は結晶の弾性的性質を強く反映したものであり,この観点から多結晶バルクと多結晶薄膜との誘電特性の相違を議論したい。また2次元正方相モデルに対するシミュレーション結果を紹介し,分極反転を伴うヒステリシスとそれに対応するドメイン構造の時間変化を可視化した結果を示す。