表面科学
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金属アルコキシド溶液を用いた強誘電体薄膜の固相エピタキシャル成長と光導波路素子への応用
梨本 恵一
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1996 年 17 巻 11 号 p. 676-682

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抄録

従来,金属アルコキシドの加水分解反応を利用したゾル・ゲル法は,化学組成の制御,均一性,大面積化,低設備コストなどの面で優れる多結晶薄膜作製プロセスとして用いられてきた。それに対して,金属アルコキシドの加水分解を抑制することにより,格子整合性を有する基板表面での不均質核生成が優先的に起こり,固相エピタキシャル成長が可能となる。本稿ではこの金属アルコキシド溶液を用いた強誘電体薄膜の固相エピタキシャル成長法が新しい光導波路素子作製技術の可能性を有することを示す。固相エピタキシャル成長を行ったSrTiO3基板上のPZT薄膜においては,(001)面によるロッキング・カーブ半値幅が0.08°,rms表面粗さがわずか1.6nm程度のきわめて平滑な表面が得られた。このPZT薄膜における光伝搬損失は633nmにて4.0 dB/cmと,PLZT系薄膜としては最も低い損失が得られた。また,サファイア(00・1)基板上に成長したLiNbO3薄膜においても3 dB/cmが得られることが確認された。このように,金属アルコキシド溶液を用いた固相エピタキシャル成長法は,化学組成制御や均一性などを特に必要とする薄膜光導波路素子の実用化に有力な技術と期待できる。

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© 社団法人 日本表面科学会
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