固体の表面では表面再構成によりもとの結晶面とは著しく異なる二次元の異方性をもつものが多い。それらの中でも特に大きな異方性をもつ表面として金原子が吸着したシリコン(111)表面の5×2再構成表面系が挙げられる。金原子吸着シリコン(111)5×2再構成表面は,温度と金原子の吸着量のある範囲内で,吸着金原子から成る一次元鎖構造をとることが知られている。この非常に異方的な短距離秩序をもつ表面に対して,二つの異なる一次元模型を組み合わせて適用することによって表面吸着金原子の短距離秩序配列を説明した。まず,一次元鎖方向に関しては,吸着金原子の吸着位置に,あるirregularityを導入した一次元格子ガス模型を設定した。モンテカルロシミュレーションにより,吸着金原子の位置相関関数を計算した結果,STM像から得られた位置相関関数をほぼ完全に再現できた。一次元鎖間方向に関しては,一次元鎖間の位相差を4段階に不連続にした一次元XY模型を設定することで,一次元鎖間の弱い相関を説明できた。