表面科学
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クラスターイオンビームと材料科学
高木 俊宜
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1996 年 17 巻 2 号 p. 81-89

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抄録

 薄膜形成, 結晶成長におけるイオンの役割を運動エネルギー的効果とイオンのもつ電荷の効果から論じた。基板への最適入射エネルギーは数eV~約100eVにあり, 特に加速電圧を加えなくても, あるいはごくわずかのイオンが存在するだけでも, 薄膜形成に及ぼす電荷の効果は顕著であることを明らかにした。このような極低エネルギーで大電流を輸送する新しい荷電粒子輸送技術として, クラスターイオンビーム技術を開発し材料科学と結びつけた。 蒸気化物質をノズルから真空中へ噴射させ断熱膨張に基づく過冷却現象によって, 100~2000個の原子が互いに緩く結合した巨大なクラスターを形成し, 電子衝撃によってクラスターを構成する原子の1個をイオン化する。電荷対質量比がきわめて小さいことが等価的に極低速大電流輸送を可能とした。しかも膜形成時のイオンの効果は十分活用し, 絶縁物蒸着中でのチャージアップは回避できる。また,基板射突時にこわれて個々の原子となり基板表面上でのマイグレーション効果が増強され, 入射エネルギーによって到来粒子の表面拡散エネルギーが制御できる。これらの特長から格子不整合が25%以上もある物質問でのヘテロエピタキシーや無機・有機複合界面の制御など従来法と異なる成果について述べる。

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© 社団法人 日本表面科学会
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