表面科学
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EL薄膜の作製と特性評価
中西 洋一郎
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1997 年 18 巻 1 号 p. 48-54

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抄録

薄膜EL素子は多層薄膜であることから,各層の膜質,各層間の界面状態にきわめて密接に関係している。ZnS:Mn薄膜EL素子では,ZnS:Mn薄膜の結晶性および配向性は蒸着時の基板温度に強く依存し,200℃付近の基板温度でZnS:Mnは[111]配向を示し,EL強度も最大を示した。基板温度の低下と共に配向性は低下し,EL強度も低下した。更に,絶縁層としてY2O3を用いた場合,[111]配向ZnS薄膜の結晶性は基板となるY2O3薄膜が[111]配向でその結晶性が最も良いとき,ZnS薄膜の結晶性も最も良く,EL素子は最も優れた発光特性を示した。次に,界面の問題について紹介した。500℃前後の基板温度で発光層をY2O3/ITO上に蒸着し,アニールするとY2O3とITOの界面で完全に剥離する。これはITOのlnがY2O3層へ拡散するためであり,ITO上に一旦SiO2を蒸着することによってInの拡散が抑制され,剥離の発生が防止されることを示した。SrSは不安定な化合物であるため,薄膜では化学量論組成のずれや汚染不純物による欠陥が生じ易い。そのため,非放射再結合の割合が大きくなったり,Ce発光中心濃度の上限を低く押さえたりする。SrS:Ceを作製する際にZnSまたはMn2+を添加することにより,SrSの膜質が向上し,EL特性が大幅に改善されることが示された。

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