表面科学
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水素の化学吸着と固体内電子相関
笠井 秀明興地 斐男
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1981 年 2 巻 2 号 p. 120-126

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抄録

まずここでなされた吸着状態のモデル計算では主に金属基盤のもつバルクの性質を考慮したものであるが,吸着子のまわりの電子状態の変化も求あることができる。すなわちモデルの枠内ではあるが,吸着子のおかれている局所的環境をも考慮できていることを指摘しておきたい。1. 金属基盤に対する吸着子の影響は局所的であり金属表面でおさまる。2. 金属表面の電子状態は吸着子との相互作用によって変化するが,半無限金属としての性質を保っている。3. 水素原子は金属内のU/|t|が大きくなるにつれて,金属基盤とより強い結合をつくるようになる。U/|t|の小さいときには金属内の電子は自由電子に近いふるまいを示すものと考えられ,電子状態は単純金属的になり,一方,U/|t|が大きくなると電子は動きにくくなり電子状態は遷移金属的になると考えられる。したがって水素原子は単純金属表面よりも遷移金属表面で強い吸着状態をとると考えてよい。4. 水素原子の吸着状態の被覆率依存性はほとんどない.これは吸着子の金属基盤への影響が局所的であるという1の結果と相通ずるものであり,吸着した水素原子間の金属基盤を介しての間接的な相互作用が吸着エネルギーと比べると非常に小さいことを示している。 終りに数値計算は大阪大学計算センターのACOS-77-NEAC-SYSTEM-900によってなされたことを付記します。

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