虚血性脳血管障害患者の長期予後と脳循環との関係を全脳循環の立場から検討した.対象は発作後1~6ヵ月 (平均62.7日) の間に脳循環を測定した天幕上虚血性脳血管障害のうち, 機能予後に関するアンケート調査の解答を得た46例である.脳循環測定よりアンケート調査までの期間は2年以上で, 脳循環代謝諸量はN2O法慶大変法を用いて測定した.その結果, 歩行機能, 箸使用, 言語機能, 尿又は大便失禁のいずれにおいても, 機能予後良好群の方が, 機能予後不良群に比し, 脳循環代謝諸量が高値であった.多変量解析を用い検討すると, 尿又は大便失禁の有無が脳循環代謝諸量 (特に脳血流量) と最もよく相関した.以上より, 1ヵ月以上の慢性期における脳循環代謝諸量は天幕上虚血性脳血管障害患者の長期機能予後を推定する指標になりうると考えられる.