肝臓
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肝内門脈閉塞を伴った円筒状肝内胆管拡張症の1剖検例
林 守源横井 克己森 清男中沼 安二太田 五六
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1985 年 26 巻 1 号 p. 95-98

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抄録

非閉塞性の円筒状肝内胆管拡張を伴った陳旧性肝内門脈血栓症による前類洞性門脈圧亢進症の1例を報告した.症例は65歳の女性で,10年前よりバンチ症候群と診断され,8年前に胆石症で胆嚢摘出術を受け,2年前より高度の食道静脈瘤を指摘され,吐血が繰り返し起ったため,摘脾と胃周囲の血管結紮を受けたが,術後2個月半で胃穿孔・心不全・腎不全を伴発し,死亡した.肝機能異常は入院中に認められなかった.血管造影にて,左門脈枝の途絶が見られた.剖検所見では肝硬変がなく,肝門部は線維性に拡大し,総肝管から区域胆管の内腔は円筒状に拡張し,組織学的には慢性増殖性胆管炎の像を示した.肝門部において,左右肝内門脈は器質化した血栓により閉塞或いは狭窄され,多数の側副循環路が見られた.門脈閉塞の周辺部胆管に破壊と胆汁の漏出による肉芽腫性炎が見られたので,この胆管炎は門脈閉塞症の1因と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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