肝臓
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急性赤芽球癆を合併したA型急性肝炎の1例
藤岡 博道浜口 浩一小笠原 誠青沼 宏深宮崎 光一山田 昌信高瀬 幸次郎中野 赳為田 靱彦小坂 義種
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1991 年 32 巻 6 号 p. 650-656

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抄録

A型急性肝炎に急性赤芽球癆を合併した1例を経験した.症例は70歳男性.尿の濃染を自覚し,近医で黄疸を指摘されて当科に入院した.IgM型HA抗体陽性よりA型急性肝炎と診断,保存的治療が施行され,GOT, GPTは改善傾向にあった.しかし高度の黄疸が持続,入院第15日より急速な貧血の進行を認め,入院第23日にHb 4.3g/dlと低下した.網状赤血球は0.1%と著減,骨髄は赤芽球系のみが著しい低形成を示した.またT. Bil, LDH (1型優位)の上昇,Haptoglobinの著明な低下が見られた.以上の検査結果より溶血を合併した急性赤芽球癆と診断した.洗浄赤血球輸血とPrednisolone 60mg/dayの投与により網状赤血球,Hbは上昇し,骨髄像は赤芽球系の過形成を呈した.T. Bil, LDHは低下傾向を示し,ステロイドの減量後も経過は良好であった.入院第77日に施行した腹腔鏡所見は胆汁うっ滞像を呈し,組織学的には肝内胆汁うっ滞を伴う急性肝炎回復期の像であった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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