1992 年 33 巻 11 号 p. 882-885
症例は28歳,男性.平成元年11月当科入院し,多発性筋炎,びまん性汎細気管支炎及びHBVキャリアーと診断した.多発性筋炎に対しプレドニン20mgで維持中の平成3年4月,トランスアミラーゼとDNA-Pの上昇を認め,HBVの活性化による肝機能の増悪と考えられた.組織学的には慢性活動性肝炎で,ICG 24.8%と悪化したためプレドニン20mg投与のままIFNα 600万単位投与を行った.IFNα投与開始後,トランスアミラーゼとDNA-Pは正常化し,多発性筋炎及びびまん性汎細気管支炎の悪化も認められなかった.その後もトランスアミラーゼ正常で経過している.IFN療法はステロイド投与に伴うHBVキャリアーの肝機能増悪に対し有効であった.また,我々の検索した限り多発性筋炎患者でのIFN療法の報告例はなく,多発性筋炎の悪化をきたすことなくIFN療法を行い得た本症例は貴重な経験と考えられる.