肝臓
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門脈本幹血栓症を合併し,肝性脳症を繰り返した肝硬変の2例
小林 正和一條 哲也小林 正典松本 晶博今井 明彦古田 清田中 栄司袖山 健清澤 研道
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1996 年 37 巻 10 号 p. 580-587

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抄録

ウイルス性肝硬変で経過観察中,頻回に肝性脳症を繰り返し,門脈本幹に血栓を認めた2例を経験した.前者は52歳の男性.C型肝硬変の経過中,1991年4月より,腹水,下腿浮腫および肝性脳症出現.1994年4月に超音波検査にて門脈血栓を指摘された.血管造影上,肝門部にcavernous transformationが形成されていた.後者は52歳の男性.B型肝硬変の経過中,1991年7月,腹部CT検査にて門脈血栓を指摘された.1991年10月に肝性脳症出現.血管造影上,門脈血栓を認め,血流は左胃静脈を経て奇静脈へ流入していた.2例とも門脈血栓の原因は肝硬変と考えた.前者での肝性脳症の主因は肝機能不全と考えられたが,後者については門脈血栓の出現による,門脈-大循環短絡路を介するシャント血流の増大が関与することが示唆された.門脈血栓出現後の脳症出現および増悪の有無は,求肝性側副血行路の発達の程度,および門脈-大循環短絡路の程度に影響されるものと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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