肝臓
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肝内に多発性結節病変を認めたブタ蛔虫による内臓幼虫移行症の一例
松下 隆司田原 良博山本 章二朗永田 賢治駒田 直人堀 剛井戸 章雄弘野 修一林 克裕坪内 博仁名和 行文
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1997 年 38 巻 12 号 p. 730-734

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抄録

症例は70歳の女性. ペット飼育歴はなく, 鶏肉を生で食べる生活歴を有する. 乾性咳嗽のため近医で治療を受けたが, 咳嗽軽快後も好酸球増多が持続するため当科に入院した. 呼吸音に異常なく, 肝脾腫なし. 検便で虫体・虫卵は陰性で, 白血球増多と好酸球増多 (15, 500/μl, 61%) を認めた. 胸部X線およびCT検査で両葉に多数の結節状陰影が, 腹部超音波検査で肝内に1cm大の境界不明瞭な多発性の低エコー像がみられた. 肝内結節性病変は単純CT検査で低吸収域を示し, 造影CTでは軽度造影された. 超音波下の腫瘤生検では門脈域と類洞内に好酸球の浸潤がみられたが, 虫卵や虫体は認めなかった. 血清学検査でブタ蛔虫 (Ascaris. suum; A. suum) のみ陽性で, 同寄生虫による内臓幼虫移行症 (visceral larva migrans; VLM) と診断した. Albendazole治療後, 好酸球数は低下し, 肺, 肝の結節性病変の改善を認めた. A. SuumによるVLMの一症例を報告した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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