2003 年 44 巻 6 号 p. 283-289
アルコール性肝硬変で, 顕性の肝性脳症を発症した5症例にフルマゼニルを3~6日間, 静脈内に持続投与し, 投与前後の脳波およびアルコール性肝硬変にもとづく肝性脳症昏睡度の変化を観察した. 脳波は5例すべてにおいてθ~δ波並びに群発的に認められていた三相波からα波あるいは slow α波へ改善し, 肝性脳症昏睡度は2例でII度から意識清明に, 2例ではIII度からI度に, 更に1例ではIII度から意識清明に改善した. フルマゼニル投与中止後の脳症の再発は1例で認められた. なお, フルマゼニルによる副作用は認められなかった. これらの結果より, フルマゼニル持続投与は安全で, アルコール性肝硬変に伴う肝性脳症の改善に有効であることが示唆された.