1996 年 53 巻 5 号 p. 322-329
水に浸漬したゲル型の架橋ポリスチレンスルホン酸系のイオン交換樹脂内の対イオンであるNa+イオン, Li+イオンの動的挙動について核磁気緩和法およびパルス磁場勾配核磁気共鳴法により検討した. イオン交換樹脂内の両対イオンの緩和時間は水溶液中より短く, 両対イオンの運動は架橋度の増加に伴ってより強く束縛されていることが明確になった. 緩和時間の温度依存性より, 両対イオンの運動の活性化エネルギーを求めた. 磁場勾配法によって求めたイオン交換樹脂内の水および両対イオンの拡散定数は, 水溶液中の拡散定数よりいずれも小さな値を示した. Na+イオンに関しては見かけの拡散定数は拡散時間依存性を示さなかったが, 一方, Li+イオンおよび水の見かけの拡散定数は拡散時間依存性を示し, 三次元網目構造による制限拡散が生じていることが判明した. 樹脂架橋度がイオン交換樹脂内の水および両対イオンの拡散に及ぼす影響についても述べた.