1995 年 84 巻 11 号 p. 1843-1847
糖尿病性昏睡は頻度は減少しているものの生命に関わる病態として重要な糖尿病性合併症の一つである.インスリン欠乏とそれに伴う高血糖,ケトーシス,高浸透圧による意識障害が主病態であり,治療は少量インスリン持続静注と著明な脱水を補正するための輸液である.本症の発症には種々の誘因が関与し,患者及び医師側の知識の向上によって多くの場合発症を防ぐことが可能である.近年,ペットボトル症候群と呼ばれる新しい発症形態の糖尿病も出現しているが,このことは糖尿病の教育が広く一般にも行われる必要があることを意味している.一方,低血糖性昏睡においてもその背景は同様であり,患者教育の充実と医療側の配慮によりほとんど発症を予防することができる.