日本化学会誌(化学と工業化学)
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可視光に応答する光触媒・安定ラジカル型無機高分子材料
上田 壽
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1992 年 1992 巻 10 号 p. 1044-1051

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抄録

可視光によって作用する無機光触媒を作成する目的で金属アルコキシドポリマーを共重合体にして光応答性と光触媒活性を測定した。共重合体は金属アルコキシド同士の組み合わせでできるものと金属アルコキシドと有機化合物の組み合わせでできるものがあることを予想し,前者としてはチタンのブトキシドおよびニオブのエトキシドを使い,後者としてはジクロロベンゼン,ピロール, 無水マレイン酸などを使った。重合はテトラヒドロフラン溶液で行い, 触媒活性の測定は99.5%エタノール/水を使い,480nmより長波長の光で分解を行った。
得られた重合物の吸収スペクトルは,ポリマーの組成に対する構造敏感性を示しており,2種の重合成分の間に結合が生じていることを示している。これら安定ラジカル型無機高分子による可視光吸収の機構としては,基底状態および励起状態ともにスピソ多重度があるために両者の間隔が狭まるというモデルを提出した。
三次元の(原子価が飽和している)結晶からなっている触媒系では,-Ti(=O)O-という単位を3あるいは4個で孤立させるとか,あるいはこのような単位9個に対して,-Nb(=O)O-という単位を1個結合させるというようなことが難しいが,共重合系では比較的に容易である。このような見地から,安定ラジカル型無機共重合体高分子材料は有意義である。

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