日本食品科学工学会誌
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アフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)・アジアイネ(O. sativa L.)種間交雑後代のブラベンダービスコグラム特性
渡辺 英夫二口 浩一Monty P. JONESIbrahim TESLIMBenjamin A. SOBAMBO
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2002 年 49 巻 3 号 p. 155-165

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抄録

WARDAでは100%の稔性を持つアフリカイネとアジアイネとの種間交雑後代が育成され,現在西アフリカ地域の農民への普及のため品質特性の解明が求められている.本研究では,種間交雑後代のアミロース含量やブラベンダービスコグラム粘度特性についてアフリカイネ,西アフリカで栽培されているアジアイネと比較検討した.また粘度特性やアミロース含量における両親の種間交雑後代に対する影響や粘度特性に及ぼす蛋白質含量やアミロース含量の影響等についての検討も行った.結果の概略は以下のとおりである.
(1) アフリカイネのアミロース含量はアジアイネに比べ高くその分布も非常に狭い範囲に限られた.一方,種間交雑後代では,平均値でアフリカイネより1.4%減少したに過ぎないが,両親よりはるかに広い範囲に分布していた.分布は特に低い含量の方に広がり15%台に達した.また,ブラベンダービスコグラムの粘度特性は,アミロース含量の場合よりさらに米質の軟らかい方向へ変異していた.
(2) 種間交雑後代のアミロース含量およびブラベンダービスコグラム粘度特性には乾季作と雨季作の間で高い相関が見られ,種間交雑後代は,作季が異なっても安定した粘度特性を示すことが認められた.
(3) 3種のイネを込みにして,数量化分析-Iにより解析したところ,アミロース含量は,ブラベンダービスコグラムの各粘度特性に対し蛋白質含量の影響をはるかに凌ぐ支配的な影響を与えていた.また,アフリカイネは粘度特性を硬く,種間交雑後代は逆に粘度特性をやや軟らかくする要因を持つことが示された.粘度特性に与えるこうしたイネ種の影響は,アミロース含量より小さかったが,蛋白質含量を上回った.
(4) 蛋白質含量は種間交雑後代の各粘度特性にわずかな影響をあたえたに過ぎず,また,種間交雑後代における粘度特性の変異幅は広かったことから,既存の種間交雑後代の中から,西アフリカ地域で一般に受け入れられる中程度の硬さをもつ,高蛋白質の系統を選ぶことは十分可能であると考えられた.

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